東京の夜

東京の夜をさまよう男女を観察するブログ

精神を鍛える夜

 

 

東京の夜。

 

望まない相手との肉体関係を持ってしまったなら、

それは、負けを意味する。

 

この日は、合コンであった。

場所は、恵比寿

商社に勤務する男性3人

 

その男の名前は、S

まだ、20代であるという彼。

どう見ても、40代妻子持ちの男にしか見えない。

 

同じ部署に所属する3人

他の男性は、自分たちの企業や、業務を自慢する気はない。

しかし、Sだけは違った。

 

「去年まで、駐在してて、海外おったんよ。」

「アパレル扱ってる。言ってくれれば、洋服あげるよ。」

 

女性たちは苦笑い。

その老け顔は、とんだモンスターを作り出してしまったようだ。

 

〈彼だけは、ダメだ〉

おそらく、ここにいた女性は、同じ気持ちであっただろう。

 

しかし、お酒は進む。時間も進む。

 

みんな酔っていた。

私も酔っていた。

記憶がなくなった。

 

朝、目が覚めると、

そのSが、目の前で裸で寝ていた。

やってしまった。

最悪だ。

この男とやってしまった。

私が、出会った史上一番の、だらしない裸であった。

20代にして、なんだ、このお腹は。

やってしまった。

このどう見ても、妻子持ちにしか見えない老け顔の男と

一夜を共にしてしまったのである。

 

一夜の事情で、後悔したことは今まで、一度もなかった。

これは、史上最大の後悔であった。

 

どうやって、この後悔を、埋めよう。

彼の財産を全て奪ったとしても、この後悔は残るだろう。

最悪だ。なんという悪夢だ。

いくら、学歴があっても、

大手企業に勤めていたとしても、

関係ない。

この男をまったく好きになれない。

彼とやったところで、なんの利益もない。

 

美味しいご飯もない。

美味しいお酒もない。

気持ちよくもない。

 

あるのは、だらしないお腹だけだった。

 

やってしまった。

 

こんな後悔に対処すべき方法はない。

ただ、この経験が自分の精神を鍛錬していくと考えるしかない。

 

東京の夜で、

鋼の精神を身につけよう。

 

この夜があるから、自分は強くなると信じる。

世界に飛び込んで行こう。

失敗をたくさんしよう。

たくさん傷つこう。

たくさん後悔しよう。

 

たくさんゲームをしよう。

たくさん自分を試していこう。

 

成功体験ばかりが、

自分を磨いていくのではない。

失敗を重ねるからこそ、

自分が磨かれるのだ。

 

そうやって言い聞かせて生きていく。

 

それは、夜だけでも昼だけでもない。

私たちは、一生をかけて、そうやって自分に言い聞かせる。