東京の夜

東京の夜をさまよう男女を観察するブログ

ストレンジャーとの夜

 

東京の夜。

 

よそ者が、東京で一晩を派手に過ごすことがある。

そんなストレンジャーを見つけてしまったとき、

注意すべきことは、そのストレンジャー

心を奪われないことである。

 

東京の夜にはまってしまったものは、

いつも、なにか特別ななにかを探している。

東京へ遊びに来たストレンジャーは、

その強がりと見栄っ張りが、

どこか特別に思えてしまう。

 

この日は、急遽、友達の飲み会へと誘われた。

23時、六本木。

雑居ビルに入った

バーで飲み会が行われていた。

 

年齢は学生から社会人数年目といった人たちであった。

地方の男子校出身の仲間たちであるらしい。

裕福な家庭で育ったお坊っちゃまたちのようだった。

 

 

何人かは、帰宅し、

女2、男2人が残った。

 

終電の時間は過ぎ、私たちは何軒か店を変え、

お酒を飲んだ。

だんだんとお酒のせいで、記憶は薄れていく。

最後に行ったところは、ダーツバーで、

テキーラショットをたくさん飲む。

完全に私は、記憶を失っていた。

 

朝目覚めると、

そこは、ホテルであった。

 

とても寝心地の良い、広いベッド、

大きな窓からは、

小さな建物たちが下に広がっているのが見える。

 

そこは、六本木ミッドタウンの上にあるリッツカールトンであった。

記憶のないうちに、

私は、このラグジュアリーホテルにいたのである。

 

二日酔いで頭が痛い。

昨晩、知り合った男性がこちらを見ていた。

彼の優しく包み込むような笑顔と、

どこかミステリアスな雰囲気は

私を魅了した。

 

その彼は、大阪で仕事をしているらしく、

たまに東京に遊びに来ているらしい。

 

そんな東京との距離感も、

ストレンジャーの魅力だ。

 

私は、急いで、リッツカールトンを出た。

 

 

ストレンジャーとの夜であった。

東京の夜にどっぷりと浸かってしまったものには、

このストレンジャーとのベストな距離感がわからない。

 

未知なるものとの遭遇こそ、

この東京の夜をさまよう男女たちの

目指すものだ。

 

 

 

 

 

 

 

退屈な合コン

 

東京の夜。

恵比寿、六本木、渋谷、新宿・・・

 

毎晩、個室の居酒屋では、合コンが行われている。

 

この合コンでは、猟を見ること、体験することが可能だ。

しかし、この日の合コンは違った。

 

月曜日の20時。

この日は、恵比寿で、弁護士との合コンであった。

30歳の弁護士たちは、どこか信用できない。

しかし、彼らの合コンは、とてもスマートだ。

 

間接照明に拘った、おしゃれな店内。

広い個室の部屋へと案内された。

3人の弁護士たちは、先に店で待っていた。

さわやかな彼らは、関西弁であった。

 

同じ弁護士事務所に所属している3人は、同期で、仲よさそうな印象を受ける。

3人は、独身らしかったが、

余裕を感じられる。

おそらく、お相手には困っていないだろう。

たわいのない会話が続く。

 

コールだらけの学生の飲み会とは、違った雰囲気だ。

 

友達の一人が、次の日、誕生日であることを伝えると、

食事に後に、プレートのデザートを用意するというサプライズがあった。

 

仕事ができる。なんて、スマートな人たちなのだろう。

 

女性たちは、終電で帰宅。

みんな、ほろ酔いで、良い気分であった。

 

しかし、私はなぜだが、やるせない気持ちであった。

誰も誰かを狙うことがない。ただの飲み会であった。

複雑な駆け引きや、ゲームもなく、乱れることもない。

 

東京の夜での、猟にはまってしまったものは、

月曜の夜の合コンは、退屈なのかもしれない。

 

東京の夜で、私は、毎晩、

武勇伝や思い出を作る。

退屈な大学生活で、生きてることを

実感するための手段なのかもしれない。

 

ゲームに興じる東京人。

ここでのプレイヤーたちは、

孤独を埋めるため、生きていることを実感するため、

このゲームに夢中になる。

 

 

 

 

 

 

 

IT社長との夜

 

東京の夜は、まるで深海。

一度潜り込んだなら、新たな発見がたくさんある。

潜り込めば、もしかしたら、お宝が見つかるかもしれない。

しかし、夢中になって潜り込むほど危険が伴うだろう。

 

そんなことを教えてくれたのは、一人のIT社長だった。

 

私は、あるクラブでのイベントへと参加した。

学生が主催する学生イベントだ。

 

がんがんに流れる音楽、だんだんと賑わってくるダンスフロア。

ここでのドリンクは、ほとんどジュースで酔うことは難しい。

そのため、ここでの勝ち組は、VIPルームで、シャンパンを飲んだ者だ。

 

VIPルームにいた、ある男性から、直接、声がかかった。

「ここ来て、一緒に飲もうよ。」

 

私と友達は、VIPルームに入った。

 

この男性は、一人でこのクラブに、このVIPルームにいるようだった。

 

「僕、細身の子が好きで、タイプだったから声かけちゃった。」

その男性は、長身ではあったが、ぽっこりお腹の太身の体型であった。

年齢はおそらく30代半ばくらいであった。

穏やかな顔つきで、優しい声をしていた。

席に着くなり、腰に手を回される。

 

「今、ちょうどここに引っ越したところなんだ。」

そういって、新しい家の写真を見せた。

自身の経済力を矢に獲物を狙う典型的なタイプであった。

 

大学2年生の私。

おとなしく、ここでシャンパンを飲むためには、

「すごいですね」としか言うことができない。

しかし、今まで学生しか知らない私には、

彼のような人が魅力的に映ったのは事実だ。

 

私は、この男性と1週間後に、ご飯を食べにいくことになる。

 

場所は、虎ノ門ヒルズ

そこに入っているお寿司屋さんで、ご飯を食べる。

お酒は、レモンサワーであった。

クラブで会ったときよりも、その男性は落ち着いていた。

 

この男性は、永遠と、自分の話をしている。

出身や、今の会社を立ち上げた経緯、今まで付き合ってきた女性、

好きな女性のタイプ。

 

私には、どうでもよかった。

ただ、この大人のラグジュアリーな世界を知りたかっただけなのだ。

 

お寿司の後は、虎ノ門ヒルズにあるルーフトップバーへと行った。

 

いかにも大人の雰囲気は、私の心をくすぐった。

 

その後、酔った私は、この男性の自宅へといくことになる。

家から見える夜景とお酒にさらに酔って、この男性に体を許した。

朝起きて、この世界の深みにはまらないように、

急いで、この男性の家を出た。

それ以来、この男性からの連絡はなかった。

 

一晩の大人のラグジュアリー経験は、私を狂わせた。

 

これを知った女は、

東京の夜という深海にさらに潜り込むことになる。

 

 

 

東京の夜への誘い

 

東京の夜。

 

この世界への招待状を受け取ったのは、18歳のときだった。

 

大学生になると、

友達作りのため、恋人作りのため、一夜相手を見つけるための、

「新入生歓迎パーティー」というものが、日本の春を賑わせている。

 

あるとき、インカレの新歓に誘われたことが、

この東京の夜へのインヴィテーションであった。

 

大学をデビューした、初対面の男女が集う。

 

白いワンピースの女の子たち、髪を弄ぶ男の子たち

 

猟のビギナーたち。

 

しばらくすると、一人の男の子が話しかけてきた。

「一緒にあっちでダーツしません?」

 

彼は、私大の医学部の1年生だった。

この日は、お互いの友達と4人でダーツで遊び、連絡先を交換した。

 

帰宅すると、彼からのLINEがきた。

「おつかれさま!今度お互いの友達を誘って、飲み会しよ!」

 

この後、私はこの誘いを受け入れ、4対4の飲み会を行うことになる。

いわゆる、合同コンパというものであった。

 

新宿の個室の居酒屋からの、カラオケ。

人生初の合コン、人生初の合コン幹事。

初めての出来事に、目が輝く。

ここで、私が知ったことは、合コンの楽しみと、大学生の男であった。

 

 

この二つを知った私は、東京の夜に吸い込まれていくのであった。

 

 

 

東京の夜は短い

 

 

東京の夜は短い。

東京では、昼に正体を隠していた野生の魂が、夜になると、姿を現す。

 

食うか、食われるか、

この猟に夢中になる男女たち。

 

この野生の魂たちは、都会の夜をさまよっている。

今夜は、どんな獲物を見つけられるのだろうか。

罠を仕掛ける者、矢を放つ者、槍で刺す者、

さまざまな猟法が見られる。

 

六本木、西麻布、銀座、新宿、恵比寿、渋谷、中目黒・・・

今夜はどのテリトリーで猟を行おうか。

 

東京の夜。

終電を逃し、始発が出るまでの間、

この大草原でなにが起こるのだろうか。