東京の夜

東京の夜をさまよう男女を観察するブログ

タワーマンションの誘惑

 

 

東京の夜。

 

港区を輝かせているのは、

あの高いマンションたちだ。

 

 

私は、クラブのVIPルームでシャンパンを飲んでいた。

 

一人の男が話しをかけてきた。

「いつもこのあたりで飲んでるの?」

 

背が低く、いかにもプライドの高そうな顔つきだ。

カジュアルにTシャツにデニムを合わせている。

年は、40過ぎくらいであった。

 

いまだに、クラブで遊んでいるタイプの彼は、

どう考えても独身だ。

 

後日、二人でご飯に行くことになった。

 

場所は、麻布十番

個室のレストランであった。

 

東大卒の、元商社マン。

現在は、ある会社の役員を務めている。

 

自分の華やかな経歴を

誇らしげに語る。

これが、彼の女性を口説く術なのであろう。

 

そんな経歴語りよりも、

 

「贅沢させてあげるよ。」

 

その一言で十分であった。

 

 

六本木、麻布十番、広尾

その男のテリトリーなのだろう。

 

会う回数を重ね、

ある時、

彼の家へと行くことになった。

 

港区にあるタワーマンションだ。

一人で住むには、広すぎる家だった。

 

東京の夜を見下ろし、

この40代の独身男性の部屋を見渡す。

 

小柄な彼には、この部屋は広すぎる。

しかし、彼がこのマンションの、この階にたどり着くくらい、

彼は今まで努力と経験を積んできたのだろう。

 

彼の人生は、彼の口よりも、このマンションが語っていた。

 

ただ、女子大生の未熟な私には、

そのマンションに魅了されたが、

彼に魅力を感じることはなかった。

 

それから、彼のマンションを訪れたことは二度とない。

 

 

港区を輝かせている、

タワーマンション

 

その住人の人生を語るその部屋たち。

 

そのタワーマンションの魅力は、

その人生にあるのか、

その高さにあるのか、

その住む人にあるのか、

 

口説きたい相手は、

どれに魅力を感じるのだろう。

 

 

東京の夜。

その高いところから、東京の夜を見下ろす人々は、

東京の夜空を見上げることを

忘れてしまっているのかもしれない。